歪み裏
これのつづきです。
肩を叩かれて起きた。
危うく乗り過ごすところだった。
起こしてくれた同僚に礼を言って、電車を降りた。
別に飲みすぎたわけではない、しかし課長になって半年、帰りの電車で寝てしまうことが多くなった。
疲れているのか。
確かに、現在会社は上場を目指しており、その経営企画課の課長として、多忙を極めていた。
それに、もう45だぜ、
と、笑いにならない笑いとともに、声に出さずに言った。
駅から家までは徒歩で15分ほどだ。
15年前に35年ローンで買った家は、支配者は自分だと威圧するかのようにそこに建っていた。
ローンはまだ20年ほど残っている。
家を建てたのは、ちょうど子供が生まれた年だった。
その子も今年から高校生になった。
昔からサッカーが得意で、高校もサッカーの強豪校に推薦できまった。
俺には似てないな。
と、また声に出さずに足元に投げ捨てた。
特に運動が得意なわけではなく、
高校でも万年一回戦負けの野球部だった。
グラウンドは強豪のサッカー部にとられ、練習はいつも近くの河川敷だった。
そう、悔しい思いもした。
ボールを無視したあのサッカー部員の顔は今でも忘れていない。
了
